Cecil Beaton (1904-1980)
ロンドンの裕福な上流階級の家に生まれたセシル・ビートンは、幼い頃より母や姉たちが見ていたグラビア誌の写真に目を奪われていた。十一歳のときに祖母が買い与えてくれたコダックのハンドカメラで写真を始め、それ以降写真を撮ることに夢中になってしまう。名門パブリックスクールを卒業してケンブリッジ大学のセントジョンズ・カレッジで学ぶセシルに父は銀行家になることを薦めるが、結局彼は長年憧れ続けた写真家になる道を選ぶのであった。
時代の変貌とともにビートンの一家は没落するが、彼自身は多彩な才能を発揮して名士の肖像写真や演劇・舞台の装置、衣装デザインなどを手がけ、イギリス社交界の有名人となっていく。最高の稿料が支払われる「ヴァニティ・フェア」や「ヴォーグ」といった世界的ファッション誌のモード写真家となり、美しい衣裳で着飾った美女たちに囲まれて華々しく活躍するビートンに、同業のプロ写真家や舞台関係者は嫉妬するが、彼の気品や才能は生まれついたものであり、彼自身は常にアマチュアの心を忘れず、既成の概念にとらわれない独自の思想を持ったアウトサイダーだという自覚があった。
エリザベスⅡ世・女王陛下のポートレート。
1930年半ば頃よりハリウッドの映画スターのポートレート撮影が大きなウェイトを占めるようになり、マレーネ・ディートリッヒ、グレタ・ガルボ、ゲィリー・クーパー、オーソン・ウェルズ、エリザベス・ティラー、オードリー・ヘップバーン、マリリン・モンローなど数多くの秀作を残し、オペラ界最高の歌姫マリア・カラス、一世を風靡したモデルのツィギー、ローリングストーンズのミック・ジャガーやキース・リチャーズなど多彩な顔ぶれを撮影している。
しかしなんといってもセシル・ビートンといえば英王室における宮廷写真家としての地位を確立したことで、彼の作品は花やレース、羽などの装飾であしらって古き良きヴィクトリア朝やエドワード朝の19世紀的な雰囲気醸し出しながら、新しきエリザベス朝のモダンさを兼ね備えたものであった。
ナイトの称号を得たサー・セシル・ビートンは、華麗にして、そして最後の宮廷写真家と呼ぶにふさわしい人物であった。
- 河辺雄二、FLEACT横須賀広報課
Date Taken: | 04.01.2014 |
Date Posted: | 03.02.2024 01:40 |
Story ID: | 465172 |
Location: | YOKOSUKA, KANAGAWA, JP |
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